休校中のメッセージ

休校中のメッセージ

珊瑚舎スコーレは新型コロナウィルス感染拡大を受けて、現在休校中です。

休校中の生徒に向けたメッセージを紹介します。

 


 

休校中のみんなさんへ

学校NPO 珊瑚舎スコーレ 校長

 

珊瑚舎スコーレからの呼びかけ「学校をつくろう!」という言葉の中身を考えるために

※ちょっと難しい言葉や言い回しがあります。ワードのフリガナ変換を機械的に使います。分からないことは調べて下さい。それでも分からない時は遠慮なく質問して下さい。

            

新型コロナウイルスの感染が収まらず、日常生活で当たり前だったことに対して様々な自粛(じしゅく)要請(ようせい)が政府をはじめ各自治体からも盛んに発信されています。そんな中、珊瑚舎スコーレは4月11日、「第20回入学を祝う会」を開催しました。参加にあたっての感染予防対策については7,8日のミーティングで、保護者、講師の方々にはSNSを通じて連絡しました。参加しない、或いは参加できない新入生や在校生にはスカイプで映像と声の交換(こうかん)ができるようにしました。

開校から20年目の出発にあたって、僕が入学を祝う会で皆さんに話した「新入生を迎えることば」を聞いてもらえなかった生徒もいるし、また、時間の都合でかなり端折(はしょ)って話したところもあるので、そのあらましを書き、「学校をつくろう!」を考えるための参考にしてほしいと思います。

 

野生の犬、リカオンとウイルス

地球上には様々な種類の命が存在しています。僕たちは動物でヒトという種類の命を生きています。その命が今、新型コロナウイルスによる感染症の恐怖に直面しています。感染症という言葉で、ふと思い起こすことがあります。テレビ番組で観たアフリカのサバンナに暮らすリカオンと呼ばれるイヌ科の野生動物のことです。人の暮らしの影響を受けて絶滅が心配されています。体つきは耳の大きな痩(や)せ犬のようで、同じイヌ科で生息地域が重なるハイエナと比べると半分ほどの体格に見えます。しかし、狩りの成功率は群を抜いていて80パーセントです。狩りの成功率が最も高い肉食哺乳類と言われています。ちなみにライオンの狩りの成功率は20~30パーセントです。その成功率の高さは群れによる抜群の頭脳的チームワークによるもので、群れの結束力の強さがリカオンの頭脳的な狩りを実現させているそうです。

リカオンには仲間同士の結束を互いが確認するための習性があります。それは舌でお互いの口を舐(な)め合うことです。挨拶(あいさつ)がわりにキスをしばらく交(か)わしているように見えます。ところが、この習性がリカオンを絶滅の危機に陥(おとしい)れているのです。感染症の蔓延(まんえん)です。人によるサバンナの開発が進み、リカオンと人との距離が近くなり、人によって運び込まれたウイルスに感染したことが原因と言われています。仲間がウイルスに感染して死んでいっても、リカオンは舌で互いの口を舐めあうことをやめません。リカオンのウイルスに対する無知、無防備を人である僕たちはどうすることもできません。感染が広がる中、一心にお互がいの口を舌で舐め合う姿を見ていると切なくなってきます。しかし、リカオンの絶滅を食い止めたいと思う人たちがいます。現在リカオンがどのような状況に置かれているのか詳細は知りません。

リカオンはウイルスと戦えません。ウイルスを知らないからです。人はウイルスと戦えます。ウイルスを知っているからです。当たり前のことのようですが、この「知っている」ということを考えたいと思います。それは「人であること」を考えることでもあります。

 

遠くの飢餓(ききん)と近くの新型コロナウイルス-反応と思索(しさく)そして想像力について

新型コロナウイルスに対する様々な情報が飛び交っています。その様々な情報をもとに人は感染から逃れる方法を考えます。人が初めて出会った未知のウイルスですが、研究者のお陰でだんだんその姿が分かってきました。分かって来ても目の前にウイルスの脅威(きょうい)がぶら下がっている状態に変わりはありません。存在を感知できないものに生存を脅(おびや)かされるのです。何とも言えぬ怯(おび)えと暮らす時間が続きます。

怯えどころか死の恐怖に曝(さら)されながら生きる人々がいます。毎日約25,000人が死に、その内約14,000人が5歳以下の子どもたちであるという現実、餓死者(がししゃ)の数です。僕はいつも、できることをして、しなければならないことをしようと思っています。目の前のこともずっと遠くのことも、気づいたことに対して、できることをして、しなければならないことをする、そうしたいと思っています。

毎日毎日、様々な現実が姿を現します。例えば餓死者の数が毎日25,000人という現実、気の毒、可哀そうと感じることは反応です。その反応、気持ちですが、それを力に餓死という現実を巡(めぐ)り、事実を調べ、考えを巡らし、現実に対する行為を見つけ出すことが思索です。思索は以(もっ)て人の人たる所以(ゆえん)です。知るということは知識を思索によって体系化することです。思索は想像力を育(はぐく)みます。想像力は現実をさらに暴(あば)き出し、本質の在処(ありか)に人を導く力です。反応以外は人に固有の営みです。

「できること」とは例えば新コロナウイルス感染予防のための情報を集め、それを具体的に行うことです。また、地球上の飢餓(きが)に対して具体的な行動をすることです。「しなければならないこと」とは例えば、珊瑚舎スコーレを様々な仲間と作り続けることです。入学を祝う会をどんな形にしろ延期も中止もせずに行うのは学校という場にとって1年の始まりと終わり、つまりお正月=入学を祝う会と、大みそか=畑の卒業を祝う会は何があろうが、その時できることをするのです。お正月と大みそかが決まっていないと、カリキュラムと時間割による中身づくりができなくなります。

気づいたことに対して、できることをして、しなければならないことをする、その根本に置く言葉は「個の尊重」です。人が長~い、長~い、その進化の歴史の中でようやく手に入れた生まれたてで、まだ湯気が上がっているような、赤んぼのように初々しい言葉です。その中身を作るのは私たち一人ひとりです。大切に大切にみんなで育てたいと思います。

 

鳥の囀り(さえずり)のような不思議な鳴き声

リカオンは生きることの切なさを思い起こさせてくれるような気がします。かつて人も同じような命の切なさの中を生きてきたのではないか。もしかすると今もそうかもしれません。リカオンの姿に遠~い遠~い昔につながる自分の命のあり様を感じるのでしょうか。だから、切なくなるのでしょうか。獰猛(どうもう)で残忍(ざんにん)、体の模様(もよう)も汚(きたな)らしい、実際は襲(おそ)っていないのに家畜を襲うなど、人の無知、無理解から生まれる嫌悪(けんお)や憎悪(ぞうお)などの感情が引き起こす反応の犠牲(ぎせい)となったのです。リカオン絶滅の危機は、感情と反応に対する思索と想像力の欠如(けつじょ)が作用しています。それがリカオンを殺すことに躊躇(ちゅうちょ)もためらいもない状況を作りました。もちろん、反応することが悪いことだと言っているのではありません。知識と思索と想像力によって身つく反応もあります。それは学ぶことを通して手に入れることができるものです。学びましょう!珊瑚舎スコーレはそういう学びをみんなと作りたいと思います。学びましょう!

あの犬とは思えないような、どこか鳥の囀り(さえずり)のようにも聞こえるリカオンの鳴き声が、物悲しく聞こえてきます。

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難しい書き方になりました。ごめん、こんな言い方になっちゃうのです。もっと勉強しないとね、ほっしーからNattoon!をもらえない。最後まで言葉の道を辿って(たどって)くれてありがとう。休校中に開設している「珊瑚舎WEBスコーレ」の午後の時間を使って、この言葉の道を歩きやすいように道普請(みちぶしん)してくれる人が何人も現れてくれると、とてもうれしいよ! ほ

2020-04-20T11:21:41+00:00 2020/04/20 11:21:41 AM |学校の日常|